私の英語学習法

2016年7月

このコーナーでは、プロの翻訳者として活躍中の方々を中心に、ご自身が経験してきた語学の学習方法や工夫、ノウハウ、また現在も語学力を維持するために行っていることなどをご紹介しています。

第7回:語学学習成功は目標設定能力?(SSさん)
第6回:段階に合ったやり方で(umeさん)
第5回:鍵は多面的アプローチ(Y. I.さん)
第4回:私の英語とのつきあい方-時間が味方(YBさん)
第3回:「精読」と「多読」をバランスよく(S.T.さん)
第2回:英語の大海で漂流しないために、自分の羅針盤を持つ(SAKURAさん)
第1回:自分の専門分野でバイリンガルを目指す(Tedさん)

第7回:語学学習成功は目標設定能力?

「イタリアでレストラン 英語が通じない」

30年前の事、イタリアへビジネス出張する機会があった。初めてのイタリアだった。北イタリアのコモ湖に近いホテルでIT関連の会議。3日間缶詰だった。会議は英語だったが、苦労しながらも、なんとか切り抜けることができた。しかし、ホテルから一歩外にでると英語が全く通じない。レストランに一人で入った時は、メニューも読めず、食べたいものが食べられない。

「夜 カフェラテを頼んで怒られた」

たまたまあるレストランでは厨房に英語が少し話せる人がいた。そして、イタリア式食事について教えてくれた。「夕食にカフェラテをオーダーしてはいけない。カフェラテは朝飲むものである。午後から飲むのは、イタリアではエスプレッソと決まっている。カフェラテを夕食後にオーダーするのは、米国人と観光客だけだ。」と教えてくれた。
パンと一緒にバターが付いてこなかったので、「バターが欲しい」と言うと、「バターはパンに付けるものではない。厨房で料理に使うものだ。パンに付けるのはオリーブオイルだ」という。生地が非常に薄いピザが出てきたので、ビザはてっきり厚いものだと思ってビックリしていると、「厚い生地のピザは米国のピザだ。あれはイタリアではピザと呼ばない」と言われた。

今では日本中にイタリア料理が浸透し、オリーブオイルにも薄焼きピザにも戸惑うことはなくなった。しかし当時は私にとっては、すべてが初めてで学ぶことばかりだった。 そんな経験があったので、次回イタリアに行く時は、前もってイタリア語を学び、レストランで食事をする時はイタリア語で注文したいと思っていた。

「イタリア人からイタリア語をならう決心」

数年前のお正月に「今年の秋にイタリアに遊びに行く」と言う計画をたてた。目的地は、パルマと決めた。パルマはミラノから列車で1時間半ほど南に下った街。パルマハムやパルミジャンチーズなどでその名を知られた食文化で有名な街だ。美味しいレストランが多いという。サッカーの中田英寿選手がここのチームでプレイしていたこともある。

そこで、秋のイタリア・パルマ訪問に向けて、イタリア語の個人レッスンを受ける一大決心をした。私を担当してくれることになったのはU先生。28歳で顔の彫が深く長身でカッコいいイタリア人男性。
私はまずU先生にイタリア語を学ぶにあたっての私の目標を話した。「イタリアのパルマに今年の秋に10日間いくつもりだ。イタリアでは美味しいものを食べたい。レストランでは、お店の人とちょっとした会話とイタリア語で食事を注文できるくらいになりたい」と述べた。

「目標はちょっと不真面目の方がやる気になる??」

U先生は「わかった。まかしとけ!!」と胸をたたいた。さらに先生から、こんなことも目標につけくわえたらどうかとの提案があった。それは「イタリアでは街を歩いている女性に声をかけるのが礼儀である。女性に声をかけられる位の会話レベルになろう。」 私にとって、もちろん反対する理由はない。それくらいのレベルまでにイタリア語をうまくしてくれるなら本望というものだ。

こうして、U先生との個人レッスンが始まった。毎週土曜日朝10時から90分のレッスン。パルマに行く直前まで続いた。具体的な目標が定まっていると、生徒にとっては少しでも目標に近づきたいとやる気がでる。そして先生も生徒のサポートし甲斐があるというものだ。U先生はテキストブック以外のことも私に教えてくれた。 

「目標は、達成度のチェックが必用・・」

8ヶ月に近い個人レッスンの成果はどうだったのであろうか??
日本から飛行機に乗り継ぎ、ミラノ空港に降り立った。さらにミラノ市内から列車でパルマに到着した。そして街中のこじんまりしたイタリアレストランに入った。ランチ時だったので、サラダ、ピザ、ビールを注文した。もちろんイタリア語での注文だ。レストランの店員さんとも、「好い天気ですね」という位の会話もかわすことができた。

私は、隣に座っている家人の顔をちょっと自慢げに見た。「どうだ! 8カ月の個人レッスンで学んだイタリア語だ。まんざらではないだろう」という表情をして・・・。すると家内が口を開いた。「随分と高いピザ代についたわね・・」との返事だった。

レストランでのイタリア語会話は目的を達したので、もうひとつの目的「街を歩いている女性に声をかける」を実践しようと心待ちにしていた。 しかし、迷子になっては大変とばかり、いつも家人がそばにくっついていたので、試す機会がなかった。

ともあれ、語学を学ぶには目標を持って学ぶことが大切である。

プロフィール
  • 名前:SS
  • 職種:社外監査役
  • 出身:横浜
  • 趣味:スポーツジム、水彩画
  • 海外経験:New York に5年半