対談記事

2018年7月

スタートアップの苦労と学びが将来に良い影響を

大里:皆川さんはビジネスを始めようと思った時、何から手を付け、どんなステップで進めたのでしょうか?

皆川様:皆さんは「フジロックフェスティバル」をご存知でしょうか? 毎年開催されている国内で最大級の野外音楽イベントです。このフェスの生みの親の日高正博さんという方がいつも泊まっていたのが両親が建てた宿でした。フジロックが苗場で毎年成長していく中、彼との親交も深まっていきました。ある日、その日高さんからいきなりイベントで店舗スペースをもらい、これが僕のビジネス経営の始まりでした。

大里:凄いキッカケですね。

皆川様:はい。だからもう、「やるしかない」「やるためにはどうすればいい?」みたいなところから僕のビジネスは始まったんです。しかし、毎年スキー競技のために海外遠征に出てしまうので、最初から「自分1人でやる」という概念でビジネスを考えていませんでした。人に任せることを前提に、「どうやって組み立てるか」から始めました。

フジロックの店舗の経験は、今でもすごく役に立っています。立ち上げ当初、人集めのために友達などに声をかけまくりました。「音楽がタダで聞けるよ」などと甘い言葉で。そうすると確かに人が集まってきます。でも、そうやって集めた人たちは原則、仕事なんてやりたくないわけですから、言われたことしかやらない。そうなると、「なんでこれ片付けてないんだよ」「だって別に言われてないし」みたいなことになってしまうわけです。

そこで、僕は「彼はたぶん5つの仕事は並行してできないから、3工程だけ任せよう」などと考え、従業員それぞれに合ったラインを作ったんです。そうしたところ、次の日から倍以上商品が売れたんですね。それですっかり「面白い!」となりまして、そこからだんだん人の動かし方などを工夫するようになりました。そんなことをスタートアップで学べたのは大変大きかったですね。

大里:現役時代からビジネスを始めていたのですね!

皆川様:選手の中には、現役時代は競技に集中する、という考えの方もいます。しかし、僕は体を休めているときに、頭まで休めなくてもよいと思って、仕事をしていました(笑)競技中心の限られた時間内に何項目も並行して考えていたことは、今の僕につながっています。

現役時代からセカンドキャリアを見据えた環境を

大里:今回、弊社スキーチームの米谷に、ぜひ皆川さんのお話を聞かせたく同席してもらったのですが、彼も実は先日、現役選手を引退したばかりで、これからビジネスパーソンとしてセカンドキャリアを歩んでもらいたいと考えています。まだハッキリ将来が分かっているわけではないのですが、それでもなんとなくやりたいことが見えていて、これからそのゴールを明らかにすることと、そこに行くために何が足りていないのか学ぶことが彼の当面の課題だと思っています。

皆川様:そうですね。若い人がいきなり何かを手にすることはできないから、やはりパートナーは必要だと思います。米谷さんにとってのアークのような。パートナーがいなかったら、次に自分がどうなりたいか、会社で何をしたいのか、実際にはよく分かりませんよね。そして、そんな時に「内野にいる」ことはすごく大事なことだと思います。会社の内側にいるからこそビジネスの本質が見えて、それを他人事として否定できない状況になるからです。そして僕たちは、ウィンタースポーツに人生の大半のエネルギーと時間を費やした"雪屋"です。そこで培った知見をセカンドキャリアに活かさなければもったいない。

大里:その通りですね。わたしはアークのような小さな会社だからこそ、トップアスリートを支援するうえで、セカンドキャリアを考えて、彼らにビジネスの世界を見せてあげたいと思っています。スキーチームの選手には、「スキーで学んだことをうちの会社に持ち込んでほしいし、逆にスキー以外で学んだことをスキーに持って行ってもらいたい」といつも言います。そうすることで現役選手は、スキーにも成果が出ると思います。米谷はそうした考えをうまく取り入れてくれた人だと思っています。

米谷については、こんなエピソードもあります。アークが最初に「マイナースポーツのトップアスリートを支援します」と宣言したころ、いろいろなアスリートからお声がけいただきました。わたしは、それに対する返信に、ちょっとしたアドバイスを送るようにしていたんです。ほとんどの方からはお返事が戻ってこないんですが、毎回なんとかそのアドバイスを実現させ、ずっとその後もコンタクトを取り続けてくれたのが米谷でした。

米谷:確かにそうしましたね。大里さんからの問いに答えることが、自分の将来につながる大切なカギのように感じていましたので。皆川さんがおっしゃるように、僕も"雪屋"ですので、自ずと選択肢が決まってくるようなところもあると思います。一般の人たちが見ることができない世界を見てきた自負はありますので、それを何とか社会に役立てたい。それがアークならば実現できる気がしたのです。大里さんのお話を聞いて。

皆川様:米谷さんにはぜひ、"生産力"を身につけてほしいと思います。僕が言う"生産力"とは、"成果やお金を生み出す力"のこと。今のビジネスパーソンとしてのキミは、人からサポートしてもらって、大里さんの力を借りて仕事をしているレベルでしょう。それを逆転させて、キミが他人の"生産力"を上げられるようにならなくちゃいけない。大里さんやアークに利益をもたらせる人物になるように努力しようということです。

米谷:はい、ありがとうございます。今回、翻訳サービスのマーケティング担当となりましたので、売上を倍増できるように頑張ります!

大里:皆川さん、アークと米谷にエールをありがとうございました。今日は長時間のインタビューに応じていただき、本当に感謝しています。

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