対談記事

2021年7月

サステナビリティに通じるYKKの創業者理念をグローバルに浸透

コロナ禍に活きる創業者の理念

大里:コロナ禍では大変なご苦労をなさったとお聞きしました。こうした状況の中で、広報として創意工夫された点などがございましたら、お聞かせ願えますか。

井深様:2020年~2021年は、厳しい年でした。「密」になることができません。わたしたちが「車座集会」と呼ぶ、会長・社長と社員が一緒になって経営理念について語り合う活動が思うようにできなくなりました。しかし逆に、こういう時代だからこそ、経営理念が大事だと思うようにもなりました。経営理念浸透活動は、どのような状況の中でも必ず実施していくと、むしろ決意を新たにした次第です。

大里:何から手をつけられましたか?

井深様:創業者である吉田忠雄の語録の再確認から始めました。「善の巡環」という企業精神は、品質・コスト・海外市場など、厳しい戦いの中で生まれたものなので、さまざまな吉田の言葉が残されてきました。その中には、今のコロナ禍に活かせるような言葉がたくさんあります。たとえば、「状況が悪い時こそ、収穫のための基盤整備を」ですとか、「地球を一つの国としてとらえよう」など。そして、これらをアークさんのご協力の下、各国の言葉に訳して発信をしました。

大里:社業の大変さもそうですが、そういった経営理念の継承や、若手および現場の皆さんのモチベーション維持について、経営トップの方々はさぞご心配されたのではないでしょうか?

井深様:はい、その通りです。ですから早速、オンラインによる車座集会を実施しました。特に若い世代――入社2~3年目の世代――のことを経営トップは心配していました。先ほどから申し上げている通り、YKKグループには独特の文化があり、隣に座っている中で、会社の思想や理念、日々の業務を伝えあう部分がとても大きかったのです。創業者の言葉にも、「道場の一刀流より野戦の一刀流」という言葉があり、強い現場主義が存在していました。それがコロナ禍で難しくなったことで、企業文化が薄らいでしまうことをトップは心配したのです。そこで、少人数で、特に20代~30代の若手とともにかなりの頻度で車座集会を実施しました。

大里:社員の方々のご反応はいかがでしたか?

井深様:参加した社員から「心が晴れやかになった」などと言ってもらえたので、本当にやって良かったと思います。理念を伝えることばかりを意識せずに、しかし、実践哲学である「善の巡環」は意識しながら、ざっくばらんな話をトップにしていただきました。

発注ごとに高まる翻訳精度

大里:そういう中で、わたしたちも「翻訳」という立場でお手伝いをさせていただきましたが、翻訳会社として興味あるコンテンツの翻訳に関わることができて、大変楽しいお仕事になりました。弊社の翻訳はいかがでしたでしょうか?

井深様:日々、適切・的確にご対応いただき、本当にありがとうございます。当初より、なるべくお1人の翻訳者さんに専任としてご担当いただきたいとお願いしてまいりました。理由は、先に申し上げたように弊社が独自の文化を持っているので、表現が独特だったり、多くの理念が存在していたりするからです。あたかも、わたしたちの社員のように企業文化をご理解いただいたうえで、YKKらしい表現にしてもらいたいとお願いしました。そうした希望にしっかりとご対応いただいたアークさんには大変感謝しております。

齊藤:基本的に1人の翻訳者で対応させていただいています。また、御社専用の辞書(用語集)を作成したり、過去の翻訳やフィードバックいただいた内容を整理し、それを翻訳者や翻訳チェッカーと共有して、次の翻訳に活かすようにしています。お急ぎの場合には、スケジュールの都合から他の翻訳者に依頼することもありますが、辞書などの資料がありますので、YKKさんらしい表現ができていると思います。

井深様:作っていただいたYKK専用の翻訳用辞書が、すごく良くできているのに感心しました。もちろん、「急ぎ」の案件の場合は、別の方によるご対応でも問題ありませんでした。辞書もしっかりと更新されていて、弊社内で行うネイティブチェックでは、翻訳のたびに修正部分が減ってYKKらしい表現になっていくのが目に見えて確認できました。

齊藤:そう言っていただけると大変嬉しく思います。翻訳者に任せるだけでなく、お客様の想いや考えを翻訳者や翻訳チェッカーにきちんと伝え、お客様にご満足いただける翻訳をお届けできるように日々努力しています。

井深様:ここ最近は、海外へのリリース配信に取り組んでいて、ここもアークさんにお世話になっています。今までは日本語でしかリリースを出したことがありませんでした。ところが、「YKK サステナビリティビジョン2050」を発表した時期から、グローバルにもリリースを出すことになりました。こちらでも、本当に助かっております。

大里:こちらこそ、本当にありがとうございます。至らない点がありましたら、今後もどんどんお聞かせください。

グローバルな情報発信と共通言語による報告書の発信

大里:最後に、御社の今後の方針や計画など、未来に向けたお言葉をいただければ嬉しく存じます。

井深様:弊社が未来に向けて強化していきたいのは、グローバルな情報発信です。ここは是非、アークさんのお力を貸していただきたい部分です。統合報告書やサステナビリティレポートのようなものの日本語以外での発信を、今後、より一層、強化していきたいと考えています。

大里:今まで実践なさってきたことを、グローバルにも理解してもらわないともったいないですからね。

井深様:はい。サステナビリティは、それを実践するだけではダメで、その内容を世の中の共通言語で伝えていくことが重要です。わたしたちの反省として、「『善の巡環』があるから大丈夫」と、情報発信を無意識に控えめにしてきてしまった経緯があります。しかし、世の中には現在、SDGsやESGの指標などが整えられています。そういった世の共通言語に合わせて、サステナビリティの情報も今後は出していかなければなりません。

YKKグループでは、グローバルでの情報発信とその言語対応、そして、サステナビリティを世の中の共通言語で発信することが現在の課題となっています。ぜひ、アークさんには今後もお力添えをお願いしたいと思います。

大里:こちらこそ、よろしくお願いいたします。今日は本当に有意義なお話が聞けて嬉しく思っています。これからも長く御社のお手伝いができるように努力いたします。

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