社員インタビュー(翻訳プロジェクトマネージャー 1)

翻訳プロジェクトマネージャーの伊藤は、英語、中国語、韓国語などの複数言語を操る語学の達人。
これまでに手がけたプロジェクトは、16ヶ国語のマニュアル制作など、語学のスキルを生かしたものが多数。

16ヶ国語の翻訳プロジェクトって、どのように進めるのでしょうか?
そして、複数の語学に堪能なそのわけは?

今回は、翻訳事業部の伊藤に、中国語翻訳プロジェクト、多言語翻訳プロジェクトの裏話などを聞きました。

英語漬けの学生時代。海外勤務で中国4都市の現地事情に精通

アークでの仕事について教えてください。
翻訳プロジェクトマネージャー(以下PM)として、クライアントのヒヤリングから、翻訳者、チェッカーといったプロジェクトメンバーのアサイン、納期管理、品質管理、最後の請求書作成までを担当しています。プロジェクトの責任者として、すべてのプロセスに関わっています。
プロジェクトでは、海外のクライアントや、多言語案件、特に中国語翻訳の案件は、私が担当することが多いですね。
「中国語の伊藤」というイメージもあるようです。
そうですね。社会人になってから、就職した会社の転勤で北京など中国の4都市に通算7年間、住んでいました。
大学では、英語学を専攻していました。ほとんどが英語ネイティブの先生で、とにかく「宿題」が多く、英語力に関してはものすごく鍛えられた学生時代でした。
その後大学院では言語学を専攻し「普遍文法(universal grammar)」なるものを研究していました。

北京、上海、香港、台湾。転勤のたびに異なる中国語に出会う

就職をして、初めての赴任先が…
中国の北京です。1995年でした。
ちょうど中国語を学びたいと思っていたところで、期待する気持ちは大きかったですね。
北京では、中国の公用語である「普通話」を身につけようと独学で勉強をしました。最初は現地の人によく笑われました。違う、おかしい、と。
日本では、外国人の日本語の間違いを笑うことってあまりないと思いますが、中国ではケラケラ笑われたり、「は?」と眉間にしわを寄せられたり。
でも、覚える上ではこれはとても良かったです。直すべきところがはっきりわかりました。
滞在3年目で、上達しているのが実感できるようになりました。
1年目、2年目より格段にスムーズになってくるんです。言葉がふっと出てきたり。
そんな頃に、上海へ転勤となりました。
広大な中国は、他民族国家で、多言語社会です。
上海では「上海語」といって、日本でいう方言レベルを超えた、上海市内でしか通用しない言語が話されています。私たち外国人には「普通話」(公用語の中国語)で話してくれるんですけど、上海人同士は上海語で話すので、久しぶりに周囲の話がわからない状況に逆戻りです。新聞・テレビなどは「普通話」なので、上海語は上達するには至らなかったですね。
次が香港、ここでは広東語でした。
私が滞在していたのは1998年、返還の直後でした。またしても、北京でせっかく話せるようになった「普通話」(公用語の中国語)は通じず、再び独学で広東語を始めました(笑)代わりに英語を使う機会は多かったですね。他の都市に比べて英語が通じました。ちなみに最近の香港は、びっくりするぐらい「普通話」が通じるようになっています。
最後が台湾です。
台湾の中国語は、大陸でいう「普通話」(公用語の中国語)とほぼ同じですが、語彙と発音に違いがあります。中国語の共通語は、台湾では「普通話」ではなく「國語」と呼ばれ、タクシーは北京では「出租汽車」、香港ではTAXIという音をそのままに「的士」でしたが、台湾では、「計程車」でした。
中国語の多様性を肌で感じる7年間だったのですね。
はい。中国国内なのに、転勤するたびに新しい言葉を覚えなければならなかったのは、毎回新鮮な驚きでした(笑)。

簡体字と繁体字、文字だけの違いではありません

中国語の文字の違いとは、どのようなものですか?
私たちアークコミュニケーションズのWebサイトには中国語のページが「中文(簡体)」と「中文(繁体)」と2種類あります。
「東京」は、北京などで使われている簡体字では「东京」、台湾や香港で使われている繁体字では「東京」となります。
日本の漢字と中国の漢字は違う、ということは、すでに多くの方に知られていると思いますが、中国語圏では漢字には簡体字と繁体字の2種類があり、それのみならず、前述のタクシーのように語彙や表現にも地域によってバリエーションがあるのです。このあたりの理解は、翻訳プロジェクトを進める上でとても重要です。
以前聞いた話では、もちろんアークではありませんが、日本語原稿から簡体字中国語と繁体字中国語の翻訳を行う際、片方だけを翻訳し、もう片方は変換ソフトで機械的に文字だけを変えて納品している翻訳会社もあるということでした。これでは、明らかにおかしい、使われていない言葉になってしまいます。ネイティブなら、見た瞬間にそのおかしさがわかります。両者は文字だけの違いではなく、別言語扱いをするべきです。
別の例では、韓国人向けの翻訳を、中国にいるKoreanの翻訳者に頼むとどうなるか?ということがあります。中国には、国内にKoreanを話す人々もいて、朝鮮族と呼ばれています。
「コスト的なもの」なのか、「ハングルがわかるから」という理由なのか、彼らに翻訳を依頼した翻訳会社があったそうです。結果は、やはり韓国で通用するコトバを知らない人が訳したために、韓国での使用には耐え得ない翻訳となってしまったそうです。
たまたまその翻訳の使用目的は大勢の人が目にするポスターで、中国語と韓国語が併記されているものだったそうです。結局その会社では、多大なコストをかけて作り直したと聞きました。翻訳に携わるものとしては、本当に怖い話です。
翻訳会社を選ぶ際、とくに多言語翻訳を行う場合には、各言語の現地事情に通じている、品質管理がきちんとできる、という観点で選ぶ必要があります。

北欧、中東、東南アジア… さまざまな言語の実績があります

多言語翻訳プロジェクトについてお聞きします。翻訳実績のある言語は何語ですか。
中国語の他には、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語、ポーランド語、ロシア語、スウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語、アラビア語…
このほかに、スペイン語やポルトガル語でも似たような例がありますね。これらの言語も欧州と南米で違いがあるんです。さきほどの中国語圏での例と同じように、ご依頼をいただくときには、翻訳原稿を使用する国・地域や目的を詳しくヒヤリングすることが不可欠です。せっかく品質の良い翻訳ができても、使えないものにもなりかねないので。
話者が少ない言語だと、翻訳者を探すのが大変ではありませんか?
欧州言語の多くは、英語を「ハブ言語」としてプロジェクトを進めることがあります。日本語をまず英語に翻訳し、英語をもとに各国語に展開します。日本語から直接、品質の良い翻訳ができる人材があまりに限られているのも、その理由です。
英語から翻訳する場合には、海外のパートナーベンダーや翻訳者を利用することが多いですね。16ヶ国語のプロジェクトのときも、そうしました。
具体的にはどのように進めるんですか?
時差もあるので基本的にメールで、やりとりはすべて英語で行います。英語ネイティブではない担当者の場合、細かい修正指示などで行き違いが生じないよう気を遣います。
内容に関しては、ベンダー間で質の差が出ないようにする必要があります。DTPが得意な会社とか、各社それぞれに得意とする領域がありますが、最終的には品質管理者である私たちが質のばらつきを補っていきます。
質の高い海外のベンダーを探すのも、PMとしては重要な仕事です。現在も世界各国のベンダーとお付き合いをしていますが、さらに優秀な現地の翻訳会社、翻訳者を発掘していきたいですね。
ありがとうございました。これから、街で見かける中国語の見方がかわりそうです!

インタビューを終えて

伊藤は印象的ないい声の持ち主。常々、話すプロフェッショナルになってもいいのに!と思っておりました。専門は言語学と聞き、言語学には音声の分野もありますから、すでに声のプロフェッショナル(というよりプロフェッサー)だったのですね。深く納得しました。この声、学生時代には某公共放送のディレクター氏の耳にとまったこともあるとか。興味がある方は、ぜひ、お問い合わせで伊藤をご指名くださいね!

プロフィール

伊藤昌徳(いとう・まさのり)
2007年入社。翻訳事業部にて、翻訳ローカライズプロジェクトマネージャー(PM)を担当。大学院で言語学を研究、語学学校での海外勤務を経て現職。
「いろんな言語に囲まれていることが、心地いい体質です」

私の1本の映画

ロナルド・ニーム監督『ポセイドン・アドベンチャー』("The Poseidon Adventure" 1972, アメリカ)

「名作。72年版も、リメイク版も全部見ました。パニック映画全般も好きですが、これは本当に面白いと思う。いろんなドラマがねぇ…、あるんですよ…」

トップへ戻る