対談記事

2020年1月

外国人材への活用に期待大、いま最も先端を行く異文化マネージメントのエヴァンジェリストに聞く

実践! 6次元モデル

大里:せっかくこのホフステードモデルを勉強したので、社内でうまくこれを使えないかと考えています。社内で議論をしていると西洋/東洋の違いではなく、実はフランス人と日本人の間や、アメリカ人と中国人の間のほうがプロセスが近いと思う時がよくあります。フランス人と日本人は、周りの情報を取り込みながらプロセスについてたくさん話し合って結論を出しますが、アメリカ人と中国人は結論から話が始まり、わたしたち日本人と議論がかみ合わない時がよくあります。

宮森様:その原因となるホフステードモデルの次元はなんだと思いますか?

大里:「権力格差」? 「集団主義/個人主義」? なんでしょうか?

宮森様:「不確実性の回避」だと思います。

大里:なるほど。

宮森様:フランスや日本は不確実性を回避したいという傾向が相当高い国なので、決断する前に情報を必要とします。そして、反論する場合にはあまり間違えたくない。そこで、いろんな情報のなかから結論を出すというやり方をします。一方でアメリカや中国はそうした「不確実性の回避」の傾向がやや低いので、「とりあえずやってみよう。ダメだったらほかの方法を探ってみよう」というかたちになりやすいのです。

大里:そうなんですね。確かにそれは納得できる説明です。弊社のような多国籍のメンバーから成る会社では有用な分析だと思います。

宮森様:多国籍のチームで働く時は、メンバーの間にどういう違いがあるのかを互いに客観的に話すことがすごく大事です。「あなたはフランス人だから」と言うのではなく、「『不確実性の回避』の強さが出たけど、今の段階では助けは不要だから......」のように、相手の国籍で判断するのではなく、ニュートラルな言語としてモデルを活用するのです。

例えば、海外にいる日本の会社の駐在員が、本社からの指示ですごく細かいデータを要求されたときに、現地の人(例えばアメリカ人)から「なんでそんな細かいものを今出さなければいけないんだ」と言われるケースってありがちですよね。そうしたら、「これは日本人が『不確実性の回避』が高いから、こうなっちゃうんだよね」みたいにちゃんと説明できるのが良いと思うのです。単純に「日本人だから」と言っても、アメリカ人はなかなか納得してくれません。

「わかり合えない」ことが出発点

大里:日本人はその昔、ごく一部の人だけがグローバルな仕事をしていたと思うのですが、現在は、在日外国人や訪日外国人が大幅に増えたし、会社が買収されていきなり外資系の会社になってしまったりすることもあります。そんな、突然、異文化に接さざるを得なくなった人に向けて、なにかメッセージやアドバイスはありますか?

宮森様:「自分が正しい」と信じ込んでいることが、実は必ずしも正しくないということ。次に、文化の違いは「良い/悪い」ではなくて「ただ違うだけ」ということ。3つ目に、自分の感情も含めて、今起きていることを突き放して客観視出来るかどうかが ポイントかと考えています。そして、そういう意識を持つためには、大前提として「生まれた国が違えば、プログラミングされていることやOSも違う」ということに気づく必要があります。国民文化は無意識のうちに私達の中に埋め込まれているので、異なる文化と接して初めて気づくもの。その違いを理解するために、ホフステードモデルはとても役に立つのです。

ところで、御社にとって異文化マネージメントの悩みは、社内コミュニケーションだけではなく、提供されている翻訳サービスのなかにもあるのではないですか?

大里:はい、それはもう、しょっちゅう(笑)。親しみのない概念などは、翻訳時に補足を付け加えることでなんとかなります。例えば、ホフステードモデルで言う「女性性・男性性」という言葉です。その言葉で表したい本質を、例えば「生活の質と達成欲」と言ったように説明すれば、読み手の理解を促せます。しかし、弊社は「メッセージ性の強い文章」を訳すことが多いので、文章中に文化に根付いたくだりがあると、翻訳に大変苦心します。

宮森様:ありそうな話ですね。文化に根ざす本質的な意味を正確に翻訳することは本当に難しそう。

大里:例えば、とある会社の社長メッセージを英訳するときに「人間万事塞翁が馬」という言葉が引用されていたとします。翻訳した結果、その意味するところを「状況を変えることに消極的な社長」のように勘違いされないために、大変気を付ける必要があります。

宮森様:ホフステードモデルで言えば、「日本人は目の前のことに一喜一憂しないで、長期を見る」ということでしょうか。さすが、日本人の男性性の強さ=高い完成度を追求する姿勢と、ネイティブが微に入り細に入り翻訳品質を高めていくスキルを組み合わせた「多国籍企業」のアークさんならではの仕事ぶりですね。

大里:最後にお褒めまでいただき、本当に感謝しています。本日は興味深いお話をうかがえて、大変楽しかったです。ありがとうございました。

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