Column

2024年1月

IRコラム④:~『IR戦略の実務』の著者が語る~海外IRの重要性~

高辻 成彦(たかつじ なるひこ)  プロフィール

日本ガバナンス・企業価値研究所 所長・経済アナリスト/情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。この他、東京都市大学非常勤講師。パンチ工業(株)・ヤマシンフィルタ(株)・NITTOKU(株)社外取締役、日本IRプランナーズ協会委嘱IRプランナー(CIRP)講座講師・試験委員などを兼任。
元経済産業省職員。早稲田大学ファイナンスMBA。立命館大学政策科学部卒。株式アナリスト、広報・IR担当双方で所属会社受賞経験。
著書に『IR戦略の実務』、『企業価値評価の教科書』(共に日本能率協会マネジメントセンター)他計5作品がある。

今回は、海外IRの重要性について、ご説明したいと思います。そもそも何故、海外IRが重要なのでしょうか?3つの視点があると考えます。

何故、海外IRが重要なのか

1)日本の株式市場では海外機関投資家が多い
第一に、日本の株式市場では海外機関投資家が多いということです。東京証券取引所が開示している東証プライム市場の投資部門別の株式売買状況をみると、委託取引では「海外投資家」の区分で実に7割を占めています。株式市場の値動きの影響力を考えると、海外機関投資家をいかに株主として獲得するかは、IR戦略上重要になってきます。

2)時価総額の成長のステークホルダーとなり得る
第二に、時価総額の成長のステークホルダーとして重要ということです。前述の通り、7割が海外機関投資家である訳ですが、自社の株主構成をみると、それよりは低い上場企業が多いかと思います。言い換えれば、株主として獲得する余地があるということであり、海外IRの取り組みを強化すれば、時価総額の成長のステークホルダーとなり得ることとなります。

3)ガバナンス改善のステークホルダーとして重要
第三に、ガバナンス改善のステークホルダーとして重要だということです。ここ10数年を振り返ると、日本のコーポレートガバナンス関連の制度改正の流れは、海外の制度を参考になされることが多くなっています。従って、海外機関投資家が考えるガバナンス関連の指摘は、実は将来の日本の制度改正の流れにもつながり得るものであり、先んじて対応すれば、それだけ投資が得やすくなる可能性が増します。

どのように海外IRを行うのか

このような状況にある訳ですが、どのように海外IRを行えば良いのでしょうか。既に取り組んでいる方も多いとは思いますが、改めて説明すると、次の3点です。

1)翻訳会社を有効活用する
第一に、翻訳会社を有効活用することです。IRのツール作成、IR取材時の通訳など、海外IRで語学対応が必要になる場面は多々あります。しかしながら、実務上の語学力がある方であればともかく、最初から全て対応できるかどうかは未知数でしょう。従って、翻訳会社を使った方が省力化できるでしょう。また、ひと言で海外機関投資家と言っても、国によって英語の話し方は異なりますし、聴き取りやすさや聴き取りにくさの個人差があることから、単独で実施するだけでなく、通訳が付いていた方がいざという時には安心です。

2)イベントの機会を増やす
第二に、イベントの機会を増やすことです。アナリスト・機関投資家向け決算説明会を実施している上場企業は多いかと思います。それ以外にも、例えば、証券会社主催の機関投資家向けイベントに参加したり、証券会社主催のスモールミーティングを行ったり、自社の施設見学会を実施したり、事業説明会を行うなど、機関投資家との機会を増やすことは可能です。ただし、海外機関投資家向けで実施するには、日本語で実施する場合に比べ、より周到な事前準備が必要になります。

3)経営陣も参加する機会を設ける
第三に、経営陣も参加する機会を設けることです。中長期の機関投資家ほど、経営陣と面談し、経営戦略の考え方を経営陣自ら聴き出したいニーズがあります。従って、通訳が必要になることもあるため、語学的なサポートが必要になるでしょう。

日本企業の海外IRが進み、日本企業がさらに発展していくことをお祈りしまして、このコラムを結びます。なお、2023年8月より、日本IRプランナーズ協会が主催する資格制度・IRプランナーの養成講座の講師に就きました。IR資格を取得したいと考えておられる方は、2024年以降の講座受講を是非ご検討下さい。直近は2024年2月の開催を予定しております。詳細は日本IRプランナーズ協会にお問い合わせ下さい。