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今でも時々、留学中にルームシェアをしていたプエルトリコ人の友人のことを思い出します。とても気が合う彼女のおかげで、留学生活は笑いの絶えない日々でした。
ある日、彼女が憤慨して私にこう言ったのです。
「マリコ、私がみんなより時間にルーズなのは自覚してる。でもね、ワークショップの仲間に馬鹿にされたの。そんなことを言われる筋合いはないわ。だって――It's my culture! なんだから!」
その言葉に当時の私は驚きましたが、いま思えば、まさに"文化の違い"というテーマを象徴する一言だったのかもしれません。
そしてこの"違い"を、理論として明快に説明してくれるのが、今回ご登場いただく間瀬陽子さんです。
間瀬さんはアークコミュニケーションズの社外取締役であり、異文化マネジメントの専門家。オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士の提唱した「国民文化6次元モデル」を活用し、企業や教育現場での異文化理解・グローバル人材育成を支援してこられました。
ご自身もアメリカやフランスでの生活経験を持ち、文化の違いを"体感"として理解している実践派のコンサルタントです。
今回のコラムでは、そのホフステード理論をもとに、私たち日本人がグローバルになったビジネスの中でより良く働き、協働するためのヒントを、わかりやすく解き明かしていただきます。
アークコミュニケーションズ代表取締役
大里真理子
「クレイジー・リッチ!」という映画をご覧になったことはありますか。NYの大学で教鞭をとる中華系アメリカ人の女性が、ボーイフレンドの故郷・シンガポールを訪問するところから物語は始まります。そこで彼女が経験する、桁外れに裕福な彼の一族や華やかな友人たちとの衝撃的な出会いと滞在が描かれた作品です。この映画の魅力はラブコメ的な華やかさにありますが、同時に文化や価値観の違いが人間関係に大きな影響を与えることを鮮やかに示している点でも興味深い作品です。主人公が「当たり前」と思っている価値観が、相手の家族からすると「理解できない」「受け入れられない」と映ってしまう場面が何度も登場します。観客は笑いながらも「文化の違いって、こんなにも強烈に表れるのか」と感じずにはいられません。
この感覚は、私たちが国際的なビジネスの現場に立ったときにも共通します。現実の世界では映画のようにわかりやすく鮮明に「文化の違い」が強調されているわけでは無いので、相手の言動や表情を不審に思ったり、不快に感じたりして、もやもやすることの方が多いかもしれません。言葉の壁だけでなく、「なぜそうするのか」「どう振る舞うのが適切か」といった暗黙のルールが文化によって異なるため、戸惑いや摩擦が生まれるのです。
最近、私自身がお手伝いをしたケースを一つご紹介しましょう。あるスウェーデン企業が、初めて日本企業と共同プロジェクトを立ち上げた時のことです。日本側メンバーはスタート早々、想定されるリスクに関する質問や、細部にわたるデータの確認を次々と依頼しました。スウェーデンのメンバーは「まだ始まったばかりなのに、なぜこんなに細かいことまで?」と困惑。しかも会議の場では、日本側はほとんど発言せず、積極的な質問や意見表明が見られません。「会議では静かで消極的なのに、会議外では膨大な確認や要望が届く。もしかしたら何か大きな懸念があって、我々は問題視されているのではないか。どう対応すれば?」と、彼らは戸惑いを隠せませんでした。
このようなすれ違いは珍しいことではありませんので、読者の皆さんも経験済みかもしれません。誠実に、真摯に取り組んでいても、相手から見れば「奇妙」「不合理」「非効率」に映ってしまうその背景には、文化の違いが影響している可能性があります。
例えば、細かい確認を重ねる日本の姿勢は「相手と一丸となって」「成果の質を高めたい」「リスクを最小化したい」という前向きな意図によるものだとしても、相手には「無駄が多い」「スピード感がない」「不信感を持たれているのでは」と受け取られることもあります。
また、会議を「専門家同士が知見を出し合って高める場」「次のアクションを決める場」としている相手からすると、日本側の沈黙は「消極的」「無関心」、ひいては「貢献する能力が無い」とまで誤解されてしまう恐れがあるのです。
それぞれの文化にはその文化特有の「当たり前」があります。すれ違いの対処法も一律ではなく、相手の文化と自分の文化の違いを認識した上で、状況に合わせた工夫をする必要があります。映画のワンシーンで笑いながら眺めていた出来事が、ビジネスの現場では大きな混乱や摩擦につながりかねません。
では、日本文化をどのように理解し、その理解を異文化環境の中でどう活かしていけばよいのでしょうか。そもそも目に見えることの無い「文化」は、定義をすることすら難しいと思いませんか。この課題に果敢に取り組んだのが、オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士です。
次回は博士が編み出した「国民文化6次元モデル」を手がかりに、日本文化の特徴と、そこから導かれる工夫のヒントをご紹介します。
間瀬 陽子 プロフィール
ホフステード・インサイツ・ジャパン シニアファシリテーター
株式会社アークコミュニケーションズ社外取締役
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