英語の豆知識

2019年1月

第九回: カナダの英語

前回はアメリカ独立戦争(American revolution)後のアメリカ英語に影響を与えたノア・ウェブスターの功績についてご紹介しました。革命(revolution)が終わるとそこには勝ち組と負け組が生まれます。アメリカ独立戦争(American revolution)も例外ではありません。勝ち組となった一派は、その後新しい秩序の下、理想の国づくりに邁進していきます。

一方、最後まで本国イギリスを支持した"ロイアリスト"と呼ばれる負け組の一派は、アメリカからの亡命を余儀なくされました。彼らの中には、海を渡ってイギリスや西インド諸島など(当時の)アメリカ国外へと散って行く者もいましたが、多くは今のカナダ(当時はイギリス領)に北上し、オンタリオのあたりに落ち着きました。現在、カナダで話されている標準語(General Canadian)は、彼ら(主に都市に住む中流層)の言葉が基になっていると言われています。

今回はアメリカを離れて、そんなカナダに目を向けてみたいと思います。

大きな視点で見ると、北米にはアメリカの東部、南部、西部それぞれの方言に加え、このカナダ方言の4つの系統があることになります。

カナダ英語は地域による方言差がほとんどなく、オンタリオ州以西の各州(マニトバ州、サスカチュワン州、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州)出身者が集まって話をしても、相当注意して聞かない限り、言葉の差はわからないそうです。とはいえ、隣国アメリカや本国イギリスとは異なる特徴を備えているのも事実です。

カナダ英語の特徴は、よく「アメリカ英語やイギリス英語と何が違うか」という視点で語られます。カナダを訪れるアメリカ人の第一印象は、「イギリス的な表現が多い」というものです。

例)

カナダ/イギリス アメリカ
tap faucet
braces suspenders
porridge oatmeal

逆にカナダを訪れるイギリス人の第一印象は、「ここまでアメリカナイズされてしまったのか」というものです。

例)

カナダ/アメリカ イギリス
gas petrol
truck lorry
wrench spanner

イギリス連邦に属していながら、なぜアメリカ人の教師(anti-British adventurer)からアメリカの教材を使って英語(anti-British dialect)を子供たちに学ばせているのか、というような声も昔からあるようです。

カナダ英語の特徴は主に語彙や発音に現れ、文法の面で目立つ特徴があるわけではありません。カナダ人は常にアメリカやイギリスの文章を読む事が多いため、両者の特徴が混ざってしまうのは自然な成り行きと言ってよいでしょう。

その一例が「tire centre」(米式+英式)。

参考)
tyre 英
tire 米
centre 英
center 米

自動車タイヤの専門店はもちろんのこと、オタワにあるこの名前を冠する屋内競技場も、その表記は Tire Centre です。

一方、発音の特徴については、house や about の母音 [au] が [əu] のようになる点を挙げることができます。従って out and about in a boat といったフレーズでは out, about, boat の母音がすべて同じように発音されることになります。

その他、国民の半数以上がアメリカと同じ発音をする例がこれ。

schedule スケジュール スケジュール シェジュール
tomato トメイトウ トメイトウ トマートー
missile ミスー ミスー ミサイル

逆に、国民の半数以上がイギリスと同じ発音をする例はこれ。

progress プログレス プラグレス プログレス
new ニュー ヌー ニュー
Z ゼーッド ズィー ゼーッド

これらの特徴によって、耳の良い人であれば、北米人同士が話している中からカナダ人を言い当てられるといいます。

隣国アメリカとは、アラスカ方面を除いて6000キロにも及ぶ長い国境で接しており、そのどこからアメリカ英語が流れ込んでもおかしくなさそうですが、そのような状況に飲み込まれることなく、今でもカナダなりの特徴を残していることは注目に値します。

ネットの動画サイトで検索をすると、カナダ英語を紹介するものがたくさん見つかるので、興味のある方はこの機会に是非ご覧になってみてはいかがでしょうか。

担当:翻訳事業部 伊藤