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米谷優インタビュー:苦難を乗り越え初優勝を手に―ピョンチャン五輪に照準定まる

はじめに

アークコミュニケーションズスキーチームの米谷優選手(スキーハーフパイプ)がこの2月、平昌(ピョンチャン)オリンピックの開催予定地である韓国ピョンチャンフェニックスパークで行われた2つの大会(ナショナルカップ、ダルマオープン)でダブル優勝を果たしました。スキースロープスタイルの日本代表選手として活躍してきた米谷選手は、2018年のピョンチャンオリンピック出場を視野に、昨年、スキーハーフパイプへ思いきった競技転向を敢行。その後、ケガに泣かされながらも見事復活を遂げ、転向が間違いでなかったことを"優勝"というかたちで証明しました。

スキーオリエンテーリングなどウィンタースポーツを愛するアークコミュニケーションズ代表取締役の大里真理子が、ともに悩み話し合った競技転向直後の苦しい時代を振り返りながら、スキー競技とビジネスの共通点やチームのあり方、そしてピョンチャンオリンピックに賭ける意気込みなどを米谷選手に聞きました。

(取材日:2017年3月)

目次

韓国五輪の開催地で念願の優勝果たす

米谷優

大里:韓国平昌でのナショナルカップとダルマオープン、優勝おめでとうございます!

米谷:ありがとうございます。
もともと、ノースアメリカンカップに出場するつもりが、大会がキャンセルになったので、急きょ、予定していなかった韓国の大会に出場したという状況でした。

大里:優勝したお気持ちはいかがでしたか?

米谷:自分が今までやってきた成果を出せたので、優勝したことにすごく納得できました。ただ、「満足はしなかった」というのが正直なところです。シーズン頭に、「ここまでレベルを引き上げられるだろう」という構想があったのですが、そこまで自分の力を引き上げられなくて......。今回の大会では、レベルを1~2程度落とした技のルーティーンでクリーンに決めて勝ったので、「もっとレベルを上げられたんじゃないか」という思いがありました。しかし、「クリーンに決める」こと自体難しいので、そこは自分を評価したい気持ちです。

悩んだ末の決断は「間違ってなかった」

恩田祐一

大里:米谷さんは、もともとスキースロープスタイル*1の選手として活躍してきたわけですが、2018年のピョンチャンオリンピック出場を目指して、2016年にスキーハーフパイプ*2に競技種目を変更するという大きな決断を下しましたね。今回の優勝は、その決断が正しかったといえる結果だったのではないですか?

米谷:そうですね。競技転向って、たとえ競技の特性が似ていても、選手にとってはすごく大きな変更と言えます。結果として成績を出せたことは、自分の決断が間違っていなかった......と言うか、「間違っていないものにできた」という感じです。

大里:そもそも、なぜ競技を転向しようと思ったのですか?

米谷:もともとスキースロープスタイル競技をやっていた中で、世界のレベルがすごく上がってきていたのですが、自分は「そこまで自分のレベルを上げれば問題ない」と、ある意味、軽く思っていました。しかし、ソチオリンピックが終わったあとに、ふと、スキーハーフパイプに転向した方が自分の競技キャリアとしてプラスに働くんじゃないかって考えたんです。ただ、どうしても客観的に考えられないところがあったので、そこは大里さんと2人で長いこと話し合いました。

大里:確かにたくさん話しましたね。
競技スキーもビジネスとまったく同じで、戦うフィールドに適切な場所を選ぶことによって、自分の付加価値を高めたり可能性を広げたりできると思うんです。ただ、今まではスロープスタイルに思い入れを持ってやってきたわけだから、そのような気持ちも加味して、2人で整理しながら道を決めていきました。

米谷:もし、スポンサーがアークコミュニケーションズ(以下、アーク)じゃなかったり、アーク社内で実際に仕事をしていなかったら、たぶん僕はスロープスタイルのままでいたと思うんです。というのは、やっぱり自分のやりたいことはスロープスタイルだったから。ただ、ビジネス的な目線で"結果"を考えた時、ハーフパイプの方が結果を出せると考えたんです。そういう客観的な見方を教えてくれたのがアークだったんですね。

大里:米谷さんがそういうふうに思考できるようになった部分は、アークが少しでもお手伝いできたのではないかと、すごく嬉しく思います。

米谷:成績が出せるようになると、今までスロープスタイル競技に持っていた情熱が、今度はハーフパイプで強く感じるようになってきました。「絶対にあり得ない」と思っていたことなので、この発見は自分にとってすごく大きな変化だったと思います。

大里:戦略や戦術、そして思いというものは、実はやりながら作って行くもの。必ずしも最初に"思い"があってやるのではないということ。これはビジネスもまったく一緒だと思います。

*1 スキースロープスタイルとは、スキーで滑降しながらコースの上から下まで連続的に設置されたジャンプ台や「ジブアイテム」と呼ばれる障害物でアクロバットな技を行い演技のポイントを競う競技。

*2 スキーハーフパイプとは、円筒の上半分を切ったような形の「ハーフパイプ」と呼ばれる構造物をスキーで滑降しながら、左右の壁でジャンプをしてアクロバティックな技を行い演技のポイントを競う競技。

ケガからの復活、支えたのは先輩の言葉

大里:結果を出せた競技転向ですが、それまでは紆余曲折ありましたよね。その中で一番大きかったのはやはりケガでしょうか。

米谷:はい、そうです。
僕らがやってる競技は、「エクストリームスポーツ」とか「アクションスポーツ」と呼ばれる過激なスポーツです。サッカーのパスミスのような小さいミスが、僕らの競技では大ケガの原因になる時があります。僕もその例に漏れず、ニュージーランド遠征(2016年7月)の時に、ちょっとした自分の判断ミスで脚の靭帯をケガしてしまいました。その結果、大会に向けた練習などが一切できなくなり、多くの可能性を失ってしまいました。「さあいくぞ!」と気合を入れた直後のケガだったので、その時は本気で「もう競技をやめよう」って思いました。

大里:それは応援している私たちも感じていました。新しいことにチャレンジすることで当然無理もするので、今回のケガが大きな負の遺産にならないかと心配しました。
いったいどうやってその状況から再び前向きな気持ちに切り換えられたのですか?

米谷:それは本当に、アークスキーチームの先輩である恩田さんと堀江さんのおかげです*3
競技が違うので今まで一緒に練習したことはありませんでしたが、普段の会話や個人的に相談させてもらってる中で、恩田さんがいつも口癖のように言うのが、「競技は自分がやめるまで終わらない。だから、どんなに辛くても、次に向けて上を向いて進まないといけない」ということでした。堀江さんからも、「とにかくひたむきに、日々地道なことをコツコツと、誰もができない長い期間やり続けることが大切」と言われてました。
でも正直、僕はそういう恩田さんや堀江さんの考え方を「ちょっと汗臭いんじゃない?」くらいに思ってたんです。しかし、自分が実際にケガをして、今までにないくらい落ち込んだ時に、本当に必要なのはそこだったんじゃないかって思い直しました。地道にコツコツやりながら次に向けてひたすら頑張ることが、スキーのキャリアが終わったあとのことまで考えて、自分の人生に生きるんじゃないかって思ったんです。

大里:私にとっては、3人がチームとして機能したことがすごく嬉しい話でしたね。

*3 恩田祐一(クロスカントリースキー、マウンテンバイク)と堀江守弘(スキーオリエンテーリング)は、アークスキーチームのメンバー。

一難去ってまた一難、トラブル続きの北米滞在

米谷優

大里:ケガ以外にも試練があったのでは?

米谷:はい。競技以外のトラブルですが、こちらもなかなか大変でした。
去年から今年にかけてアメリカ遠征に行くことになり、コロラド州で3カ月程度、家を借りることになったのです。そこで、アメリカのコミュニティサイトで「家を探している」旨の投稿をしたところ、不動産会社のエージェントから「いい物件がある」という連絡をもらいました。詳細を見るとすごく良い内容だったので、早速契約書を送ってもらい、契約して前金まで支払いました。一緒に住むもう一人の選手と連れだって現地に向かい、家の前まで行って不動産会社の人と落ち合う予定でした。ところが、10分経っても20分経っても誰も来ません。「ヤバいんじゃない?」ってなって不動産会社に電話したら、「おかしいですね、私たちはコロラドではビジネスを展開していないんですよ」って言われてびっくり。
もう頭がまっしろになりましたね。不動産会社の人に「もしかしたら詐欺かもしれないので、警察を呼んでください」と言われ、震える手で警察を呼びました。警察が来たので説明したところ、「送金をトレースしてみよう」ということになり、調べた結果、コロラドに振り込んだはずのお金がフロリダに振り込まれていたことが分かりました。こうなるとコロラド州の警察は対応できないので、「FBIに頼んでください」と。飛行機の中で『24(トウェンティーフォー)』を見てきたばかりで、まさか現実にFBIのお世話になるなんて思いもよりませんでした(笑)。

大里:それは災難でした!それからどうしたんですか?

米谷:借りる予定だった家のマネージャーが、現地在住の日本人の友人を紹介してくれて、結局、在米中、その方にほとんどお世話になってしまいました。その間も、借りたレンタカーのダッシュボードにパスポートや国際免許証を忘れて、それがニューヨークで見つかったりと、まさに波乱万丈な北米ツアーとなりました。ただ、おかげで親切な人たちに巡り合えたので、トータルで見たら「むしろ詐欺に遭ってよかった」くらいの感じです(笑)。

やるべきことをやるに尽きる

大里:最後に、これからのことについて、今考えていることを教えてください。

米谷:ひたすら、今やるべきことをやるに尽きると思ってます。
自分ができることをやった結果としてポイントやリザルトが付いてくるので、引き続き、当初設定した目標に向けて日々やるべきことをやり、ワールドカップやオリンピックの切符をこの手につかみたいと思っています。

大里:まだまだ、勉強することが多いのは確かですが、実行力、実現力を買っています。トップアスリートは、最高のパフォーマンスを得るために、継続して努力をするエキスパートです。自分の強み弱みを把握して練習を工夫し、単調な練習を毎日実行し続けるなんて、容易には出来ません。その能力を活かして、スキー同様にビジネスパーソンとしても成功してほしいと思っています。

インタビューを終えて

米谷優

「スポーツで得たことをビジネスに生かす。ビジネスで得たことをスポーツに生かす」

アークコミュニケーションズスキーチームに加わることになった時の、米谷さんとの約束の言葉です。

レースで戦うのは選手1人です。しかし、戦うまでの道のりは、多くの人たちの知恵と力を借りながら、多面的に考えて切り拓くことができます。
米谷さんはすでに、戦略を考えるフェーズから実行するフェーズへ移りました。目の前のレースで成果を出し続け、ぜひ、オリンピックへの切符をつかみ取ってほしいものです。

2017年3月31日
アークコミュニケーションズ 代表取締役 大里 真理子

最後に

アークコミュニケーションズの『米谷優選手応援サポーターシステム』をとおして、米谷選手を応援してみませんか?

今後、壮行会などのファンイベントや、シーズンオフには米谷選手と直接話せる企画などを計画しています。米谷選手と一緒に、オリンピックの夢を追いかけましょう!

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