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ジョージア・軍用道路<復路>「コトバの壁」|翻訳者派遣会社が送るエッセイ 未知しるべ

ジョージア・軍用道路<復路>「コトバの壁」

翻訳者派遣会社が送る、世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ

未知を求めて世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ。往路編に続き、今回はロシア国境にほど近いカズベキからジョージアの首都トビリシへ、軍用道路を戻る復路の旅です。

おばあちゃんの機関銃掃射

カズベキの宿を朝出て、ジョージアの首都トビリシ行きのバスが出る場所へと向かう。途中、先導してくれたのは七面鳥の親子。ニワトリはよく見るが、七面鳥とは珍しい。ヒナを大勢引き連れ、狭い道いっぱいに広がってヨチヨチと歩いている。その後ろから、友人と私が大きなバッグパックを背に、これまたヨタヨタと歩いていく。小さな村ののどかな朝の風景だ。

のんびりとした気分でバス停(といっても、何の印もないが)に着くと、すでに小さなミニバンに、大きな荷物を持った人が乗り込んでいた。何とかおじいちゃんとおばあちゃんの小さな隙間に座らせてもらい、バスは首都トビリシへ向け、出発した。

背を浮かし、縮こまった体勢で3〜4時間はけっこう辛い。おばあちゃん、おじいちゃんに「ドブロ・ウートロ(おはよう)」とロシア語で挨拶をすると、「あー、ロシア語を話せるのね」とおばあちゃん。そこから機関銃のごとく一気に話し始める。「ニェット、ニェット、ロシア語、少しだけ」と片言のロシア語で訴えても、おばあちゃんの機関銃は鳴り止まない。右側のおじいちゃんに目で助けを求めると、「彼女はロシア語はあまり話せないようだ」のようなことを言ってくれた。「ああ、そう、ジョージア語は?」いや、話せたら最初から話しているよ、と思いながら、いかにも残念そうに首を振ってみせる。

ようやく納得してくれたらしいおばあちゃんは、標的をおじいちゃんに変更。私の膝に手をのせ、身を乗り出しておじいちゃんへの掃射を開始した。もはや背を倒すことも前傾もできない。早くトビリシに着いてくれと願うばかりだ。

「ムツヘタ」の謎

無理な体勢に耐え、トビリシまであと1時間ほどという場所で、山上に教会が見えてきた。おじいちゃんに「ムツヘタか?」と聞いてみる。山上にあるジワリ修道院と、町中にあるスヴェティツホヴェリ教会が有名で世界遺産にも登録されている町の名だ。おじいちゃんは「ニェット」と首を振り、「○○○は行ったか?」と聞いてくる。「いや、ムツヘタには明日、行く予定だけど」と再度言ってみるが、「知らない」という。「○○○は素晴らしいぞ」と、またもや聞き取れない単語を繰り返す。ムツヘタは世界遺産だし、知らないはずはないだろうに。何か変だと思ったものの、それ以上深く聞けるだけのロシア語力もなく、そのままになってしまった。

その謎が解けたのは、トビリシのホテルだった。フロントの女性に「ムツヘタに行きたい」と告げるも、全く通じていない様子。ミスプリかと不思議に思いながら、ガイドブックの写真を見せてみる。

「あー、ンッヘタ!」

あ、バスのおじいちゃんが言っていた言葉だ!「ムツヘタ」ではなく、日本語では表音できない「ンッヘタ」なのか。そのギャップはすさまじく、そりゃ「むつへた」では通じないよねと思わず納得する。

カタカナは外来語を取り入れる偉大な発明であることは間違いないが、その限界もある。以前、カタカナ表記が「攻めている」と話題になった子ども向け本で、「玉ねぎ」を「オニオン」ではなく「あにゃん」と書いてあるのに衝撃を受けたが、確かにそのほうがまだ伝わるかもしれない。

ジョージア人とお知り合いになった折りには、ぜひ生の発音を所望し、このギャップを実体験してほしい。

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