ペルー・ピサック「高級な遺跡」|翻訳者派遣会社が送るエッセイ 未知しるべ

翻訳者派遣会社が送る、世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ

ペルー・ピサック「高級な遺跡」

未知を求めて世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ。今回はクスコから北東32kmにあるピサック村の遺跡を訪ねた時のこと。2つの趣の違う遺跡と、アドベンチャー感漂う山道を堪能しました。

カントゥータの宿

マチュピチュから列車で再びオリャンタンタイポへと戻ってきた私は、そのままローカルバスに乗り換え、ピサックへと向かった。ピサックは市が立つことで有名だが、私の目当ては「聖なる谷」と呼ばれる一帯に広がるピサックの遺跡だ。

着いたのは夕刻で、市場も店じまいをしている頃だった。ガイドブックで目星を付けていた宿へと向かったが、営業している雰囲気がない。奥で人の気配がした気がして、大声で来訪の意を告げてみたが、門は閉じられたままだ。たまたま通りかかった人が、宿の人を探して来てくれるというので、しばらく待つことに。5分ほどして戻って来たが、どうやら見つからなかったようで、別の宿を案内してくれるという。あたりが暗くなる中、いつまでもそこにいても仕方がない。店じまいに忙しい人たちをかき分けるようにして、市場を突っ切り、ついて行った先は、水色の門扉の家だった。一見、民家のように見えたが、門が開くと敷地が奥まで続き、中庭には植物が茂り、ペルーの国花「カントゥータ」も咲いている。一目で気に入り、そこへの逗留を決めた。

野性味あふれる野放図な遺跡

翌朝、いよいよ遺跡へ向けて出発だ。ガイドブックには、遺跡がある山頂までタクシーで往復した場合の相場は20ソルとある(十数年前の話なので、現在の料金は要確認)。20を意味するスペイン語「ベインテ(veinte)」を口の中で繰り返しながら、水色の門を開けて外へ出ると、早速タクシーの運転手が寄ってきた。遺跡に行きたいことを告げると、「30ソル」と言ってくる。「ノー、ノー、ベインテ」と言うと、「25」と少し下げた額を提示してきた。「ベインテ」と繰り返し、町の中心へと歩を進める。まだまだ序盤戦だ。ベインテで行ってくれるタクシーがいればよし、いなければ折れればいい。

「OK、ベインテ」

結局、町の中心に着く前に向こうが折れ、交渉は成立。タクシーに乗り込み山頂へと向かった。山頂から遺跡を巡り下っていくので、帰りはこの場所で待っていてほしいとお願いし、山道へと踏み出した。間もなくして、崩れかけた遺跡が見えてきた。昨日訪れたばかりのマチュピチュとは比べるべくもない小規模だが、打ち捨てられた感じがいい。他に人の姿もなく、遺跡独り占め感もたまらない。崩れかけた石積みの段を上ろうとすると、伸び放題になった草が足を刺す。こんな野性味あふれる感じも嫌いではない。隅から隅まで探検し尽くし、誰もいない野放図な遺跡を堪能した。

「高級感」漂う佇まいに衝撃が走る

タクシーとの待ち合わせ場所へ向けて、再び歩き始めた山道には、岩をくり抜いたトンネルもあり、「インカ道」気分を味わえる。眼下にはウルバンバ川がくねり、それがもたらした肥沃な地に段々畑が広がる素晴らしい眺めだ。足元の道も、緑が映える遠景も、すべてが目に楽しく、足取りも軽い。が、遺跡探検でだいぶ時間をつかってしまったので、そろそろ急がなければいけない。歩速を上げて尾根へと出た途端、私は息をのんだ。

下った先に見えるのはピシッと寸分の隙間もなく石を組み上げた、なんともきれいな遺跡の姿。

「これがピサックの遺跡だ!」

下草も刈られ、きれいに整備されており、先の遺跡とは明らかに「高級感」が違う。先の遺跡が庶民なら、こちらは一流セレブだ。

庶民探検に入れあげすぎたため、セレブ散策は短縮せざるを得なかったが、この落差を肌で感じられたことは収穫だ。先ほどまでの"浮かれ気分"はしぼむことなく、膨らむばかりだ。

ただ問題は待たせているタクシーだ。想定よりもだいぶ時間を超過しているはずだ。ちゃんと待っていてくれたなら、最初の言い値の30ソルを払おう。そんなことを思いながら、「高級な遺跡」を後にし、弾む足取りでタクシーが待つ場所へと急いだ。

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