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翻訳者派遣会社が送る、世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ

ウズベキスタン・サマルカンド「青の都の風紋」

ヨーロッパ、チップの愉しみ方

未知を求めて世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ。27年の時を経て再び訪れたサマルカンドとブハラ。その想像を超えた変貌ぶりに、風によって刻々と姿を変える砂紋を思いました。

かつてマルコポーロが『東方見聞録』で「青の都」と讃えたサマルカンド。

モスク、メドレセ(神学校)に三方を囲まれたレギスタン広場は、今や大勢の観光客で賑わい、夜には光と音楽のショーまで開催されているという。

私が初めて訪れたソ連時代には、観光客もほとんどおらず、手押し車でレンガやタイルを運び、また梯子に上ってタイルの図面を紙に写し取るなど、修復に励む職人が少しいるだけだった。

初めてレギスタン広場に立った時の感動は今も忘れない。壁面を覆うタイルに刻まれた精緻な幾何学模様からうえに目を向ければ、ターコイズプルーに輝くドーム。空の青に溶け込み、私の頭上に青のタイルの破片が降り注いで地まで埋め尽くされる。そんなな凄まじいまでの圧迫感と浮遊感に言葉を失った。

それから27年後、私は再びウズベキスタンを訪れた。

埃っぽい「土色の町」というイメージだったブハラは麗々しくタイルで飾られた都の姿へと復興され、サマルカンドと同様、観光客で溢れかえっていた。土産物屋が軒を連ねる光景も、以前には見られなかったものだ。ソ連時代に訪れた時は、土産を売る店一つなく、ようやくブハラで1軒見つけて、シルクにミシンで刺繍した布を1枚買った。ホテルで遭遇したアメリカの団体客と「何を買ったか」をお互いに見せ合ったことを覚えている。私が買った布以外には、ムスリムが被る四角い帽子に刺繍をあしらったものくらいで、「それはどこで買ったんだ?」とよく聞かれたものだ。

その店を探し出したい欲求に駆られ、タキ(現地語で丸屋根の意)と呼ばれる道路の交差点を丸屋根で覆った昔ながらのバザールをたどったが、人の多さも、音や光のボリュームも昔とは段違いで、記憶の破片と照合しようにも、焦点はぼやけるばかり。過去と現在は交差しつつも、重なることはない。

諦めてメイン通りに戻り、スザニと呼ばれるウズベキスタンの刺繍布を数枚買った。その店の女主人が言うには、「夏季の観光客が来る時期には店を開け、冬季は生徒たち20人と一緒に作品づくりをする」のだとか。伝統的な柄だけでなく、創作柄もあり、幅広い。モスクの中にまで土産物屋が軒を連ねるのは、本来の厳粛さや壮麗さを損なうもので、いただけない。が、観光客商売が女性の現金収入や伝統工芸の復興に繋がるというよい側面もある。キルギスでもカザフスタンでも女性の手しごとであった刺繍は最近では絶えてしまったと嘆く声も聞かれるだけに、生徒20名を抱え、伝統柄を継承し、新たな創作を生み出す女主人の存在は頼もしいものに思えた。

「日本のフェアに出展するのよ」。彼女の娘たち2人はトランクに手提げ袋に加工したスザニを詰め込み、"Tokyo bigsight"と言って笑った。

サマルカンドでも、昔の面影を探すことは難しかった。

レギスタン広場からシャーヒズィンダ廟群への道も、今はきれいに舗装され、土産物屋が並ぶ大通りになっていた。かつては人とすれ違うこともなく、たまに車がビュンと通りすぎるだけの道だった。「本当にこの道でいいのか」と不安になり始めた頃、「おおーい、おおーい」とどこからともなく呼ぶ声がする。声の主を探して木立に足を踏み入れると、羊飼いのおじいさんがいて、"どこから来たんだ?"と聞いてきた。"カザフスタンか、キルギスタンか、それともモンゴリヤンか"と。"ヤパーニア"(ロシア語で日本人)だと答えると、おじいさんは皺だらけの手で顔を覆い、"おー、目も髪も黒いからわからなかった"と嘆いた。それから、おじいさんは"まあ、座れ"と手招きし、20頭ほどの羊が眠る横で丸いナンをちぎり、湧かした湯で淹れたお茶を分けてくれた。これらのやり取りは多分、ロシア語だったのだと思う。なぜか通じ合い、ごちそうになったお礼を述べ、太陽の照りつける道へと戻り、再びシャーヒズィンダ廟群を目指した。

そのシャーヒズィンダ廟群もまた、27年を経て大きく様変わりしていたことは言うまでもない。

想像を超えた変貌ぶりへの若干の寂寥感と、「その時代を知っている」という優越感。そして大きなトランクいっぱいに商品を詰めて、今まさに日本に乗り込もうとする"ソ連を知らない世代"の真っ直ぐな視線への羨望。そして、マルコポーロが訪れるずっと昔から東西文化の交差点であったこの地の幾星霜の営みの中では、私のような旅行者の感傷なぞ塵芥に過ぎないのだ。砂を運ぶ風にそんな思いが重なる。

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