スリランカ・ダンブッラ「白い粉の誘惑」|翻訳者派遣会社が送るエッセイ 未知しるべ

翻訳者派遣会社が送る、世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ

スリランカ・ダンブッラ「白い粉の誘惑」

ウズベキスタン・蜂蜜

未知を求めて世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ。今回は、スリランカのダンブッラから車でジャングルを分け入ったところにある隠れ家ホテルでの出来事です。

「スリランカに行ったら絶対にここに泊まろう」というホテルがあった。

以前にたまたま機内誌で見たもので、その見出しがまたふるっていた。
「ジャングルに埋もれていくように設計されたホテル」とまあ、そんな感じだったと思う。世界的に有名な建築家ジェフリー・バワが設計したそのホテルは、まさに緑に飲み込まれんとしている。ホテルというよりは、打ち捨てられた廃墟のよう...。「これはぜひとも探検したい」と、かねてから思っていたのだ。

首都コロンボから北東に約150km、ダンブッラの黄金寺院を訪れ、14mにも及ぶ巨大な涅槃仏を拝した後、いよいよ"ジャングル"へ。かのホテルに着いたのは、熱線を放っていた太陽がようやく衰え、大地が力を盛り返しはじめた頃。建物を覆い隠す緑のカーテンからわずかに鉄骨がのぞく。カーテンがあればめくって中を見たくなるのが人の性だ。内側から見る景色はどうなっているんだろう、期待に胸を弾ませて到着。エントランスからレセプションへは岩がむき出しになった通路をゆく。

岩の中へ、森の奥へ−−。

ふと涅槃仏の胎内をゆく錯覚にとらわれる。ジャングルの深部へと今、私は向かっているのだろうか。
途端に、明るい光が差し込んできた。目の前に広がるホールは大きな窓を通じて森へと通じている。この目隠し効果を生む通路は、バワの企みか。「アユポワン」とシンハラ語(スリランカの公用語)で迎えられ、まるで異世界へとジャンプしたような気分だ。

部屋に荷物を置くと、さっそく館内を探検に出かけることに。

数あるバワの企みを暴かずにはいられない。階段を上った先、森を背景に絶妙に置かれた2つの椅子、鳥がさえずり、外気が心地よい渡り廊下、それぞれ趣を異にする3つのプール...。それらを巡り、部屋に戻ると、珍客が慌てて出て行く姿が目に入った。サルである。
10cmほど、窓が開いている。窓は閉めていったが、カギまではかけていなかった。主が留守の間に、サルは器用に窓を開けて侵入し、慣れた様子で室内を物色していったらしい。コーヒーとともに置かれていた砂糖とクリーマーが根こそぎ持って行かれていた。コーヒーはブラック派の私にとっては大した痛手ではない。が、もう1つ荒らされた白い粉があった。小さなジッパー付きビニール袋に入れてあった洗濯用の粉洗剤だ。砂糖か、クリーマーかとでも思ったのだろう。引きちぎられた袋、床にぶちまけられた白い粉が、中身を口にした途端に吐き出し、袋を放り出したサルの姿を如実に物語っていた。
わずかに残った粉洗剤をつまみ上げ、窓の外を見やると、サルがベランダで戦利品である砂糖を悠々と舐めている。森にとっての珍客は、サルではなく、私たち人間のほうなのだから仕方がない。コーヒーはブラック派ではない人、そして「白い粉」を持っている人は、窓のカギを確認してからの外出をオススメする。

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