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イエメン「パンクの対処法」|翻訳者派遣会社が送るエッセイ 未知しるべ

イエメン「パンクの対処法」

翻訳者派遣会社が送る、世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ

未知を求めて世界を旅するヤマ・ヨコのエッセイ。そびえる岩山の天楼から谷へと突入、二度のパンクに「待ちぼうけ」。北原白秋作詞の唱歌のごとく「寝て待つ」くらいの呑気さがイエメンでは必要なようです。

谷の反撃

ハジャラが如き摩天楼の村があれば、当然、谷もある。

私とドライバー、ガイドの3名を乗せた白い車は、ハジャラを後にすると谷へと侵入した。川底のような大小さまざまな石の上を、車はガタピシと進んでいく。案の定というべきか、尖った石の攻撃により、車はあえなくパンク。ドライバーは慣れた様子で、予備タイヤをトランクから取り出し、手早く交換を済ませ、車は再スタートした。

一度のパンクですめばいいが...。そんな私の心配は早くも当たり、車は再度、ストップした。今度はドライバーも「お手上げ」の表情だ。「他の車が来るのを待つしかない」と、英語が話せぬドライバーに代わり、ガイドが言う。外も暑いが、車内にいるよりはと3人それぞれ外に出て、大きめの石を椅子にじっと待つ。ただ待つ。暑さが募る中、ただ待つ。車は来ない。口にこそ出さなかったが、ここまでの道、すれ違う車もなかった。やはり、と思うが、待つしかない。3人の間には沈黙が流れ、たまに吹く風がもたらす一瞬の涼を全身で追い求める。

それから1時間半ほど経っただろうか、ようやく1台の軽トラが来た。待ちに待った「通りすがりの車」だが、他の2人は慌てる様子もない。ドライバーはやおら立ち上がると、軽トラの運転手と窓越しに二言三言交わす。運転手も心得た様子で、予備タイヤを持ってきてくれた。これで一安心。あとは三度目のパンクがないことを祈るだけだ。

再び、待ちぼうけ

ようやく復活した私たちの車は、軽トラの後に続いて来た道を戻る。なぜ戻るのか不明だが、暑さで疲れて問いただす気力はない。まあ、どうせなるようにしかならないと、半ば諦め、後部シートに身を委ねる。

車は小さな集落で止まった。ドライバーが先ほど交換したばかりのタイヤを外し、軽トラの運転手に返している。替わりに新しいタイヤを買うのかと思いきや、「ここでパンクしたタイヤの修理をする」のだとガイドが言う。

やれやれ、また待ちぼうけか。まあ、なるようにしかならないと、心の中で繰り返し、ガイドがどこからか借りてきてくれた小さな椅子に、腰を下ろす。ガイドは集落の子どもを1人呼びよせ、ポケットからしわくちゃの紙幣を取り出した。しばらくするとジュース2本を手に、子どもが帰ってきた。ガイドはおつりの小銭をお駄賃代わりに子どもに、ジュース1本を私に手渡し、自分もジュースをゴクリと飲み干す。私もガイドに続く。冷たいジュースは涸れた喉を潤し、胃へと続く道をはっきりと浮かび上がらせていく。

さっきの道ばたよりは、木陰があるだけ、だいぶマシだ。それに椅子とジュースもある。まあ、なるようになるさ。空を仰げば、風に揺れる木の葉がサヤサヤと囁いた。

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